エネルギー革命のカギはマイクログリッド

資源エネルギー庁によると、再生可能エネルギーは2012年7月~13年6月までで304.9万kW分が導入された。内訳は、太陽光発電が291.3万kWと96%を占め、以下、バイオマス発電(6.8万kW)、風力発電(6.5万kW)、中小水力発電(0.2万kW)、地熱発電(0.1万kW)と続く。また、太陽光発電の認定済み設備容量を加えれば2091万kWとなる。

太陽光発電は日の出とともに発電を開始し、正午でピークを迎える。その後は発電量が低下していくケースが一般的だ。風力発電は「風任せ」で発電量は常に変化する。こうした系統安定化に向けて本格導入が検討されているのが大容量2次電池だ。
太陽光・風力はこのように安定性を欠くため、ベースロード電源には原子力発電が必須とされ、当局はこれを基礎としたベストミックスを描いていた。
ところが近年急速に再生可能エネルギー向け大容量2次電池の開発が進み、一部で実用化が進められている状況を見ると、通商産業省主導の原子力発電をベースロード電源とするエネルギー政策は見直されなければならない。
福島第一原発事故を踏まえ日本は大胆に脱原発にエネルギー政策を切り替えるべきであった。日本の事故を受け、ドイツでは2022年に原発ゼロを目指し、いち早く再生エネルギーへの切り替えを開始し、2018年には40.4% (風力が20.4%、太陽光が8.4%、バイオマスが8.3%、等) を占めるに至った。
北欧や米国では風力発電のコストがKWあたり6円、ドイツの太陽エネルギーのコストは日本の3分の1以下になっており、近い将来KWあたり5円以下になる。大量生産による設備償却費の激減がこの要因であり、太陽光パネルの需要規模が日本とは比較にならず、量産効果が尋常でなく、ドイツ・北欧では太陽光パネルの価格が飛躍的に安くなっている。
日本は原子力にこだわっているうちに、再エネの国際競走争力を失ってしまった。しかしながら失地回復の余地はまだ残っている。カギは「エネルギーの地産地消(マイクログリッド:末尾の参照)」にある。太陽光発電や風力発電を広域集中の配電網から解き放ち、地方分散化を進めるべきだ。このためには大容量の蓄電システムが不可欠となる。
再生可能エネルギー向け大容量2次電池として期待されているのがNAS電池、リチウムイオン電池(LiB)、レドックスフロー電池だ。まずこの
三つの電池を比較してみよう。
特徴異なる3つ電池(主要2次電池の性能比較)
■ NAS電池の特徴は、(1)エネルギー密度が高い(鉛電池の約3倍)、(2)電解質が固体のため自己放電がなく、エネルギー効率が高い、(3)長寿命(15年以上)、(4)可動部分がなく保守が容易、(5)完全密閉型で排ガスや騒音が出ないことなどが挙げられる。
 10年2月、11年9月には同電池が原因で火災事故が発生したため安全性が懸念されている。
その後、原因究明と対策に積極的に取り組み、火災事故の原因および延焼防止対策を実施した。そして、危険物保安技術協会を事務局とする第三者委員会の検証により妥当であると評価された。これを受けて12年下半期から受注を開始した。
■ リチュームイオン電池(LiB)は、スマートフォン、携帯機器、民生用機器、非常用電源、電動工具、電動バイク、電気自動車とあらゆる用途に採用されている、我々の生活に最も身近な2次電池だ。小型2次電池の分野では性能としてはトップクラスではあるが、大型用途での導入が遅れている最大の要因が高いコストだ。現状、1kWh10万円程度と言われているが、単純に計算すると1MWhで1億円となってしまう。また安全性についても不安がある
■ レドックスフロー電池は、エネルギー密度は低いものの、サイクル数が1万回以上と圧倒的に高いほか、バナジウム、鉄、クロムなど燃焼性の低い物質を使うため安全性にも優れている。逆にエネルギー密度が低いため小型化には不向きで、もっぱら大型用途が中心となる。国内では住友電気工業(株)(大阪市北浜)が製品化している。
 同社は12年7月から横浜製作所(横浜市栄区)において国内最大規模の集光型太陽光発電装置とレドックスフロー電池を組み合わせた実証実験を開始した。また実用サイズのコンテナ型蓄電池を使った実証実験に入った。

(以上の「主要2次電池の性能比較」は、半導体産業新聞の記事を参考にした。大容量2次電池の比較は別表参照)

別の情報では、住友電気工業は2019年度にも、電解液にチタン系材料を採用した新型の大型蓄電池「レドックスフロー(RF)電池」を市場投入する。従来の主材料である希少金属のバナジウムを使わず、性能は同等のまま電池コストを現在の2分の1程度に抑えられる。材料やセル構造などの改良を重ねて20年度に1キロワット時当たりのコストで3万円以下を目指し、大型蓄電池で先行するナトリウム硫黄(NAS)電池などと競う。
 大型蓄電池は、発電量の変動が大きく送電網に負荷がかかる再生可能エネルギーの貯蔵用などで市場拡大が見込める。国の20年度の余剰電力貯蔵用電池の開発目標は、1キロワット時当たり2万円以下。
レドックスフロー電池(RF電池)の特徴はこの電池の構造と電解液の組成からきている。RF電池はセルの中で電解液を循環する方式の蓄電池で、住友電工が業界に先駆けて実用化。蓄電容量の大型化が容易なほか、約20年間使用できる長寿命、電解液、セルスタックなどが不燃・難燃材料で安全性が高い。同社は北海道で容量6万キロワット時の世界最大級のRF電池を稼働したほか、米国や台湾でも実証実験を進めている。
現在、横浜製作所で実証実験がすでに終わって、商品化を進められているコンテナー方式は、我々がもっとも注目している設備で、これこそがエネルギーの地産地消を担う基幹設備となる。電極部(セルスタック)と電解液のタンクが分離され、ポンプでタンクから電解液を必要に応じ送り込む構造となっていることが、大容量で長寿命、しかも安全性が高いと云う特徴を生み出している。(左図参照 )
注:マイクログリッドとは?
電力と言えば、大型発電所で多量に作られたものが送電線によって家庭や職場に供給されているものがほとんどです。
ところが、こうした電力供給システムでは長距離の送電をおこなわなければならず、その際に発生する多くの電力損失や環境への影響が避けられません。また災害などが起これば周波数変動により地域全体が停電になってしまう危険性もあります。
そこで近年注目されているのが「マイクログリッド」です。
電力消費者の近くに小規模な発電施設を設置し、分散型電源を利用することで安定的に電力を供給するという仕組みです。これには太陽光・風力発電等に対応した、安定的な大容量2次電池が不可欠です。