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経済的・政治的・社会的無関心が許される時代は終わった

結論から言えば、こうなったのは新型コロナのパンデミックが大きな要因となっている。何事もない平穏な時代にはこの無関心さは生きていく上、必要な術だったかもしれない。

パンデミックがもたらした社会の変化は階層の上下を問わず、従来と全く違ったものの考え方、生活スタイルを求められるようになった。
難しい問題には触れず、その日が楽しければよいとする安易な生活態度は自滅の道を選ぶことになるのです。

当然のことながら「今だけ、カネだけ、自分だけ」とか「理不尽から目をそらす」「最悪の事態を考えない」「現実から目をそらし今を歓楽する」「争いを避け自己主張を放棄する」「長いものには巻かれる」「政治的発言は立場を悪くするので発言しない」「選挙など何の得にもならないとして棄権する」「社会は改革できない」、このような空気が蔓延する社会の持続性はなく、多様性のない社会は必ず衰退する事を銘記するべきです。


有名医学雑誌のNEJM
政治的立場を取らない有名医学雑誌のNEJMが208年の歴史で初めて「違う候補に投票を」と異例の社説を掲載しました。再選を目指すトランプ大統領に逆風です。注目の社説には米国の失敗原因が列挙され、日本人にも役立つ内容です。早期緩和ケア大津秀一医師がわかりやすく解説しました。医療の正しい情報を医師が専門的に解説する学術的な内容です。
※引用論文・記事 →https://www.nejm.org/

英科学誌ネイチャー
新型コロナの米国の失敗理由を有名医学雑誌が掲載 結論「トランプさんを変えないと….」(2020/10/10)

【学術会議介入への国際批判】英科学誌ネイチャーは8日付で「世界各地で政治家が学問の自律や自由を後退させている」との論説を公表した。新型コロナウイルスを巡る米トランプ大統領の対応などと共に、菅義偉首相が日本学術会議メンバーの任命を拒否した問題に言及している。ー引用おわり

GoToキャンペーンを悪用して「カネのなる木」を地でいった学生が「総合的・俯瞰的観点から考えた」と云っている。今のところ違法ではないのでうまい逃げ口上だとしか云えない。

論点のすり替えや粉飾の事例の数々

● 官僚主導の打破ー>政治主導ー>官邸主導
● 諮問がないー>仕事をしていないー>諮問がないのに提言できない
● 教科書のデジタル化ー>手段の目的化
● ハンコの廃止ー>手段の目的化
● 日本学術会議の体質改善ー>本質をずらす
● PCR検査だけに頼るのは良くないー>本質をずらす


時事通信WEB版

1次・2次補正の一般会計総額は57.6兆円に膨らんだ。ただ、予算の使い道をめぐっては、中小企業への持続化給付金に絡む「中抜き」疑惑を野党が追及。予備費10兆円も「白紙委任」との批判を受けた。一方で、新型コロナ感染第2波への懸念が広がっており、与党の一部には3次補正予算の編成を求める声も上がる。 引用おわり

第3次補正は避けられず予備費も含め総額90兆円に及ぶ見通しだ。2021年度予算要求が105兆超えとなれば財政再建は遠のき前途真っ暗だ。それ以前に政府のお財布である日銀がもたないだっろう。中央銀行はつぶれることはないが資金不足となりカネが回らなくなることは確実だ。

数字を粉飾したり増税・福祉の切り捨てなど政府の政策余地は残されてはいるが、日銀はそうはいかないでしょう。バーゼル規則など中央銀行としてメガバンクや地方金融機関との関係において最低限の節度を守らなければならない国際信用上の縛りがあるのです。

2022年に向けて強化されるバーゼルⅢは自己資本比率の計算基礎となるリスクアセット(RWA) の基準を自己資本比率をキープするために国債保有高を入れる考えです。これに備えて規制対象の金融機関が一斉に国債を投げ売りすることも考えられているのです。

これが国債の暴落につながり、金融市場などに大きな影響が出かねないと考えられているのです。結果として日銀の国債等の膨大なリスク資産が毀損され、長期金利に影響を及ぼします。

「日銀・営業毎旬報告」のコロナ影響前(2月)と最近の数値(9月末)を比較すればコロナの影響で日銀の資産内容が大きく毀損されていることがよくわかります。資産の大半がリスク資産となっているのが見てとれます。
 
僅か7か月で総資産は109.7兆円も急膨張し9月30日現在で689.6兆円となっております。同じく国債は+50.4兆円で538.2兆円、社債・ETF等投資信託合計は+10.5兆円で45.9兆円とリーマンショックをしのぐ異常な変化となっています。
 
現政権が金融政策の面でもアベクロ体制を引き継ぐなら、もはや日銀が政府の財布であり続けることは困難です。
QEの出口を塞がれた日銀は、「自らの身を守る」か「やっているふりをする」か「エンジンの空ふかしをする」かしか逃げ道はないでしょう。
通常、金融の変動は少なくとも2~3年のタイムラグを生じます。コロナ禍はそれを許しません、半年か一年の猶予しか与えないでしょう。
 

金融システムが破綻すれば為替や貿易収支にも影響が及ぶのです。ギリシャの危機は他山の石ではなくなります。世界第3位の経済規模を持つ日本の財政を助ける世界の金融機関は全くないのです。日本の政界は与野党ともにこの危機感に全く欠けていると云わざるを得ません。

コロナ危機もさることながら、後に控える金融恐慌の恐ろしさを知るべきです。前の投稿でも云いましたが、コロナ対策と経済対策との両立は困難です。

寒くなり第3波に襲われる危険を抱えながら、国は五輪を巡って大きな賭けにでております。国を愛し国民を思う気持ちが少しでもあれば、与野党を問わず何をおいても危機管理に徹するべきです。

急激な金融恐慌は国民生活を破壊します。これは終戦直後知る80歳以上の人が苦い経験を経て身に染みついている実感です。


危機を煽るばかりと思われても不本意なので、僅かながら私が実践している処方箋を記しておきます。

● 積極的に情報を集めよう
● ディスタンスを保ちながら人との交流をコロナ以前に戻そう
● 頼りになる仲間を作ろう
● 閉じこもりを避け極力外に出よう
● 衛生環境に気を配りながら運動しよう
● イライラせず精神を安定させよう
● 支出の無駄を省き、コロナ対策と健康にはおカネを惜しまない
● 第3波が来る前に、健康診断や予防注射を受けておこう
● 医者にかかるチャンスは今しかない、不調があれば今の内に直しておこう
● 何事も頭から否定するな、同時に鵜呑みにするな


 

「シンデミック」の悲劇を断ち切ろう

WHO-画像より

小泉政権以来、グローバリズムと並行して政権の基本政策となってきた新自由主義が今回のコロナショックでいよいよ見直さざるを得ない状況となってきました。

つまりコロナ禍で新自由主義の弊害が表面化してきたのです。コロナがその弊害を浮き彫りにしたと云っても間違いではないでしょう。

云うまでもないことですが念のためにその結果を確認をしておきます。

1. 弱肉強食の世界が拡大したこと

2. 強い企業がもうかれば下にその儲けが滴り落ちて来ると云う「トリクルダウン」の幻想が破綻した

3. 格差が拡大し非正規労働が4割を占めるに至り実質賃金が長期にわたり低下した

4. 「改革」の名のもとに民営化が進められ新しい利権が生まれ、社会的ひずみが生じた

5. 縦割りの弊害で、国民の叡知を生かす事が出来ず新事業や新開発が遅れた

6. 大都市集中が極端に進み、地方の切り捨て、地方経済のひっ迫を招いた

以上の社会的ひずみは新型コロナウイルスの感染爆発と重なりますます増幅されました。
国連開発計画(UNDP)の報告がその状況を克明に記しております。
要点のみ下記します。

● パンデミックの結果、世界は10兆ドルの損失を負うことになる

● 発展途上国の被害は特に深刻で労働人口の半分が職を失う

● 世界の一人当たり所得が4%失われる

● 食料危機と医療崩壊が途上国を襲う

皆さんは「シンデミック」と云う言葉を耳にしたことがあるでしょうか?

「いまわたしたちが直面しているのはシンデミック(複数の感染症の組み合わせによる複合的な影響)です」と、コロンビア大学メールマン公衆衛生大学院疫学部教授のチャールズ・ブラナスは語っています。さらに「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行と並んで人種的な不平等が蔓延しており、ふたつの問題が一体化したことで米国の問題が非常に深刻化しています」と付け加えています。

つまり、言葉の本来の意味は、2つの感染症が重なって深刻な事態を招くことを云うのですが、コロナ禍ではCOVID-19の流行に重ねて経済恐慌などの社会的・政治的・文化的・精神的影響が浮き彫りになる事を指摘するのにこの言葉を用いるのです。

UNDPの報告は正に「シンデミック」の指摘に相当します。


次に日本の国内に目を移して問題点を探ります。

経済の理解が乏しい現政権はコロナ対策と経済対策が両立するとの幻想にとらわれ有効な対策を打ち出しておりません。つまり既に使い古した「新自由主義」をこの期に及んで振りかざし強引に突破しようとしています。竹中平蔵、デビッド・アトキンソンの両氏など新自由主義の先導役を抱え込み改革の名のもと格差拡大路線に突き進む姿勢をあらわにしてきているのす。

こんな状況下で、コロナ対策の実効性に関係なく五輪を強行する強い意志が感じられます。感染症対策の常識から云えば、各種GoTo施策や外国人の出入国緩和などは徹底したPCR検査を前提とし陽性者を厳密に隔離するのが当然の行動ですが、この世界の常識を無視する態度は断じて許されません。

検査の精度を勝手に7割と前提し、それを理由に検査は万能ではないとする暴論が跋扈しています。検査方法の違いを意識的に無視して、精度の悪い抗原検査や精度の悪いPCR検査などを引き合いに出して結論を誘導するなどもっての他です。精度の高いPCR検査器の自動機や精度の高い試薬が容易に手に入ることは今や当たり前で、少なくとも90%の精度は保証できる環境が目の前にあるのです。

やるべきことをやらないでコロナ対策と経済対策が両立するはずはありません。あと5~6か月で結果責任が厳しく問われることになるでしょう。格差の拡大下でコロナ対策に失敗することこそ「シンデミック」の悲劇なのです。

イタリアで深刻なコロナ禍に直面し、精神が荒廃した状況に苦しみ、デカメロン運動などで文化の再興に尽くし、外国人で異例の表彰をうけた内田洋子氏の報告などが参考になります。


野党の結束はうまくいっているように見えますが、足らないのはコロナ対策と新自由主義の徹底的批判です。
小沢一郎、海江田万里の両氏が五輪委員会の顧問になっていたり、消費税減税が野党と統一のメインテーマになっていたり、もっとやることがあるだろうと残念な点はありますが、枝野代表が2年間限定と云っていることは評価します。

以下は、コロナ後の社会設計として「ベーシックサービス」で持続可能な社会を提唱する井出英作教授の動画です。社会的サービスの無償化で「公助・共助・自助」と、新自由主義の考えをひっくり返す政策を提案する画期的な主張が展開されています。特に動画の後半に注目いただきたいと思います。
財政学者・ 井手英策さん(慶應義塾大学経済学部教授)